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マンスリーエッセイ

知的でチャーミングな女の会話のおしゃれ 八坂  裕子

第6回恋のタネを蒔く女になる

恋をすると、男も女もみずみずしい表情になる。感情が熱くゆたかに動きはじめるからだろう。
だからって、恋をしていないと感情が熱くゆたかに動かず、みずみずしい表情になれないなんてシャクじゃないか。
日頃から感情の身体能力アップを心がけ、いつも恋する女のように熱く暮らしたい。 
それにはパターン化されたフレーズは使わず、自分のこころの声で会話をすることだ。
たとえば、恋人関係ではなくても、男と女が約束をしたとする。
ところが、電話だ。
「ごめーん、今日の約束。仕事が入っちゃってねえ」と、彼。
「あ、そう、わかった。じゃあ、またね」と、彼女。
とりつくシマもないそっけなさ。怒っているのかいないか。とにかく色気はない。
セリフを替えてみる。
「仕事が入っちゃってねえ」と、彼。
「ワァオ、残念。今日は私、おしゃれしてとってもステキなのよォ」と、彼女。
「ヒャー、悔しいなァ。近くまた、電話するよ。ホント、ごめん」と、彼。
「OK、待ってるわ」と、彼女。
友だち同士の2人だけど、彼女はひと粒、彼のこころに恋のタネを蒔いたのである。
それは、“口説き”というような具体的なものではない。相手の感情を受けてのリアクション“反応”である。
彼女は自分の感情をリアクションして彼に伝えた。その反応が彼のこころに“うれしさ”を芽ばえさせたのだ。
誰かとのコミュニケーションを持つ歓びがそこにある。こころを揺さぶり、揺さぶられる快感。
ドタキャンやトラブルは、恋のタネを蒔くチャンスだ。
いや、トラブルがなくても恋のタネは蒔ける。
電車やバス、エレベーターなどの乗り降りに譲ったり譲られたりしながら、「お先に」「あ、失礼」「どうもありがとう」と会釈やスマイルやひと言で反応すること。
それだけで相手の1日はホンワリと温かくうれしくなるだろう。
知的でおしゃれな女は、反応するときにチャーミングヘルツを発するのだ。
周波数に相手のこころは振動する。
誰かと誰かが恋をしていてもいなくても、地上に恋のタネが無数に蒔かれたら、恋は自然に芽ばえ、育っていく。

著者プロフィール

八坂裕子(やさか・ゆうこ)
詩人。東京生まれ。お茶の水女子大学附属高等学校卒業後、文学座演劇研究所修了。1967年、資生堂の会報誌『花椿』で、詩「ナポレオンと苺」が最優秀賞を受賞。以後、詩集、小説、エッセイ、映画評論など幅広いジャンルで活躍。現在は、執筆活動に加え、エコールプランタンで、会話クラスの講師も務める。 著書に『お金をかけずに贅沢に暮らす』(三笠書房、知的生きかた文庫)の他、30万部突破のベストセラーとなった『頭のいい女、悪い女の話し方』『幸運の99%は話し方できまる!』など多数がある。

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