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マンスリーエッセイ

知的でチャーミングな女の会話のおしゃれ 八坂  裕子

第1回魔法が使える女になる

「カッコいい! 誰? あの人」
と、見た目100パーセントで魅了する美女。
雰囲気はサラリと都会っぽく、プロポーションは理想的。着こなしも上手で、流行をほどよく取り入れている。
ところが、話しはじめると彼女のイメージはガラッと変わる。

なにげない雑なひと言。意味のない笑い。やたら多い相づち。慣れ慣れしい口調。
どれもがその場にふさわしくなく、相手は第一印象のすばらしさも忘れ、彼女との再会を望まない。

残念!
彼女は魔法が使えないのだ。

一方、見た目は特別ではないが、第二印象でハートをぐいっとつかむ女がいる。
彼女は魔法が使えるのだ。
たとえば、朝。
「おはようございます!」
電車でいっしょになった上司に、オフィスの廊下ですれちがう同僚に、彼女はさわやかに挨拶し、ニコッと微笑む。
彼女に「おはようございます!」と言われて、イヤな気分になる人はいない。

挨拶のルールは、相手を傷つけず、質問でも答えでもない軽快なフレーズを投げかけ、気持ちのいい空間を共有することにある。
「涼しくなりましたね」
「お先に失礼いたします」

相手との距離感を大切にして、彼女は挨拶を怠らない。魔法をかけつづける。
街角で道を尋ねるときも、魔法のフレーズをひと言。
「あの、ちょっとおたずねします。歌舞伎座はどちらでしょうか?」
交番のポリスにも、その前置きを省かない。すると、相手は魔法にかかり、ていねいに教えてくれるのだ。

声のトーン、タイミング、物腰、表情、リズム、声量、語尾の強弱。
彼女の話し方にチラッチラッと知性が光る。魔法に知性はつきものだ。
彼女の挨拶は、どんな相手に対してもていねいで品がよく、楽しげである。
だから、「オープン・ザ・セサミ」「アブラカダブラ」と同じ力を発揮するのだろう。
そして、相手に「カッコいい! 誰? あのひと」と思わせる。

著者プロフィール

八坂裕子(やさか・ゆうこ)
詩人。東京生まれ。お茶の水女子大学附属高等学校卒業後、文学座演劇研究所修了。1967年、資生堂の会報誌『花椿』で、詩「ナポレオンと苺」が最優秀賞を受賞。以後、詩集、小説、エッセイ、映画評論など幅広いジャンルで活躍。現在は、執筆活動に加え、エコールプランタンで、会話クラスの講師も務める。 著書に『お金をかけずに贅沢に暮らす』(三笠書房、知的生きかた文庫)の他、30万部突破のベストセラーとなった『頭のいい女、悪い女の話し方』『幸運の99%は話し方できまる!』など多数がある。

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