Home > マンスリーエッセイ > 八坂裕子 知的でチャーミングな女の会話のおしゃれ

「カッコいい! 誰? あの人」
と、見た目100パーセントで魅了する美女。
雰囲気はサラリと都会っぽく、プロポーションは理想的。着こなしも上手で、流行をほどよく取り入れている。
ところが、話しはじめると彼女のイメージはガラッと変わる。
なにげない雑なひと言。意味のない笑い。やたら多い相づち。慣れ慣れしい口調。
どれもがその場にふさわしくなく、相手は第一印象のすばらしさも忘れ、彼女との再会を望まない。
残念!
彼女は魔法が使えないのだ。
一方、見た目は特別ではないが、第二印象でハートをぐいっとつかむ女がいる。
彼女は魔法が使えるのだ。
たとえば、朝。
「おはようございます!」
電車でいっしょになった上司に、オフィスの廊下ですれちがう同僚に、彼女はさわやかに挨拶し、ニコッと微笑む。
彼女に「おはようございます!」と言われて、イヤな気分になる人はいない。
挨拶のルールは、相手を傷つけず、質問でも答えでもない軽快なフレーズを投げかけ、気持ちのいい空間を共有することにある。
「涼しくなりましたね」
「お先に失礼いたします」
相手との距離感を大切にして、彼女は挨拶を怠らない。魔法をかけつづける。
街角で道を尋ねるときも、魔法のフレーズをひと言。
「あの、ちょっとおたずねします。歌舞伎座はどちらでしょうか?」
交番のポリスにも、その前置きを省かない。すると、相手は魔法にかかり、ていねいに教えてくれるのだ。
声のトーン、タイミング、物腰、表情、リズム、声量、語尾の強弱。
彼女の話し方にチラッチラッと知性が光る。魔法に知性はつきものだ。
彼女の挨拶は、どんな相手に対してもていねいで品がよく、楽しげである。
だから、「オープン・ザ・セサミ」「アブラカダブラ」と同じ力を発揮するのだろう。
そして、相手に「カッコいい! 誰? あのひと」と思わせる。
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八坂裕子(やさか・ゆうこ) |