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マンスリーエッセイ

広田千悦子 ほっこりハッピー! 暮らしを楽しむ和のこころ

第5回季節移り変わりがはぐくんでくれる力

こんにちは、作家の広田千悦子です。
今年の夏は各地で蝉の鳴くのが遅かったり、急激に気温が下がったりと
季節の進み具合がいつもと違っていました。
慣れ親しんだふうに季節が流れてくれないと、なんとなく落ち着かなくて、
季節の流れを無意識のうちに全身で感じて生きているのだと、改めて思い知らされます。

今、秋は着実に訪れて、風情のある流れを見せてくれています。
たとえば、はるか遠くに高くなった空の雲を思い切りよく見上げる時――。
夕食の準備をしている頃、ふと気がつけば夜が早くなり、
秋の虫の声がこころなしか強くなったと感じる瞬間。
熱気を帯びていた頬に当たる風が、ひんやりと疲れを癒す冷たさに変わった、と心地よく感じる時――。

季節を愉しむ感覚の積み重ねは、
あらゆる事柄を細やかに感じる感性をはぐくみます。
それはやがて、物事の真実を見抜く力へとつながります。
変化の中にあっても「変わらないもの」があるという現象は
どんな場においても、大切なものを忘れない心につながります。

また、日々に翻弄されていても、ふと手を止めて空の色の移り変わりをみれば
何かほっとひととき心安らぐのは不思議です。
ただ、頭ではわかっていても、あまりにも身も心も疲れ過ぎて
日々のあたたかさを感じることが難しくなる時が誰しもあります。
そんな時の道しるべのようにあるのが日本の行事や、季節の愉しみ方なのかもしれません。

これから先は美しい月の夜のはじまりです。
大気が澄み渡ってきて青く白く輝くような月の光は眩しいくらいです。
今年、一番月が美しく見えると言われている十五夜は
9月12日です。
江戸時代の人達も観月船をだしたりして月を愛でていました。
その当時は、月の形で日付を知る暦を使っていたのですから
日々、飽きるほど月を眺めていたはずです。
それでもあえてお月見と称して日々を愉しむところに、
何かにつけて日々の中に喜びを見つけていく日本人の感性が浮かび上がってまいります。
十五夜前後には各地で観月会などが催され、しの笛や琴の音も合わせて
楽しめる場所もあります。
日々に翻弄されて大切なものを忘れてしまいそうな方には、おすすめの行事でしょう。
秋の月を眺めて夜のひとときを愉しみ、しばし深呼吸。

リフレッシュして次へと歩きだせます。

著者プロフィール

広田千悦子(ひろた・ちえこ)
作家。著書に「おうちで楽しむにほんの行事」〈技術評論社〉「知っているとうれしいにほんの縁起もの」(徳間書店)「湘南ちゃぶ台ライフ」(阪急コミュニケーションズ)「子ども歳時記」〈扶桑社〉など多数。宝島社の「GLOW」で「広田千悦子の和菓子暦」を毎月連載中。東京新聞・中日新聞にて「くらし歳時記」を毎週月曜日に連載中。
広田千悦子のサイト office peace blue

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