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ケーススタディ 編集担当の製作日誌

1月某日 翻訳書の選定

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(左)エージェントでの打ち合わせ風景
(右)世界にはまだまだ未邦訳の良書が埋もれている…!

翻訳出版物は「著作権エージェント」と呼ばれる会社と仕事をします。
エージェントは海外の書籍を私たち出版社に紹介してくださったり、翻訳出版権の契約をまとめてくださったりします。あるいは、われわれ編集者が世界各地で開催されるブックフェアに出張し、海外の出版社と直接話をして情報を集めてくることもあります。
この本もそんな中の1冊でした。

2月某日 企画書作成

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(左)『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』の原書です
(右)渾身の企画書。的確に本のセールスポイントを伝えます

英語の原書を読んで日本のマーケットでの可能性を感じたら、すぐ上司に相談。本のあらすじやセールスポイントなどをまとめ、企画書として提出します。もちろん日本と海外では文化や出版事情が異なる部分も多いので、その点はよくよく吟味します。
『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』は、全米ベストセラーという実績と、自己啓発書として今までにない視点に着目し、翻訳権を獲得。人気の本は他の出版社と競合になることも。

2月某日 翻訳者へのアプローチ

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目に留まるような企画を持っていけるかどうかが編集者の手腕…

この本の新しいところは、「脳の働きから見た幸せ論」。幅広い執筆ジャンルで活躍されている脳科学者・茂木健一郎先生に翻訳をお願いしたいと最初から決めていました。
しかし、ベストセラーを連発されている先生のもとにはたくさんの出版社から原稿依頼が殺到しているとか。「この本は茂木先生なしにはありえない!」という熱意を込めて手紙を書き、原書とともに翻訳をお願いします。

3月某日 翻訳・原稿整理

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編集者はかゆいところに手が届く女房役

ついに茂木先生から「お引き受けします」とのお返事が。さっそく先生と相談しながら翻訳を進めます。多忙な先生には、なるべく負担がかからないように気遣いを怠らないのも編集者の仕事。スケジュールの管理、原稿のチェック、校正などを、細やかに丁寧に行ないます。翻訳原稿ができ上がったところで、茂木先生から「解説のことば」をいただきます。これで原稿がそろいました。先生の本書へのほれ込みようが伝わってきます。

9月某日 本文レイアウト・デザイン

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書体の選び方ひとつで、ページから受ける印象は硬くも柔らかくもなる

デザインひとつで本の雰囲気はガラリと変わるもの。書体、文字の詰まり方、余白の取り方、イラストや図版の位置、見出しのレイアウト、紙の種類、あらゆる要素に工夫をします。大事なポイントをわかりやすくするために、本文は2色刷りにすることに決定。色は赤がいいのかブルーがいいのか、赤ならより濃いほうがいいのか、オレンジ色に近いほうがいいのか……これで本を開いたときの第一印象が変わってくるので、上司とともに慎重に検討。

9月某日 イラスト発注

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本のイメージがどんどん形になっていきます!

イラストや図版などのビジュアル要素は、本のイメージを大きく左右します。
この本のイラストレーターは石玉サコさん。どんな絵柄がベストマッチか打ち合わせ。「こんな感じですか?」と目の前でサッサッとラフを描く石玉さん。頭の中で考えていたことが形になって表われてくる瞬間――クリエイターのプロフェッショナルと仕事をする醍醐味です。

10月某日 タイトル決定

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今日は焼き肉でも食べてリセットするか…

タイトルは本の命運を左右します。「どうすれば本の中身をうまく伝えられるか」「どうすれば読者の目に留まるか」……さまざまな可能性を探ります。
その本に対する思い入れが強いほど、力みがちになったり。上司からは「読者が必要とし、心に響くようなものに!」と繰り返し言われます。今日もまた厳しいダメ出し。しかし、ここで立ち止まっていてはいい本はできません。違う視点から、もう一度!

10月某日 カバーデザイン

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「製作部は“情熱のレベル”も業界一ですよ!」(製作部デザイナーM談)

製作部はデザインのプロ集団。編集者の熱意と「どんな読者に手に取ってもらいたいか」を伝え、「装幀」として形にしてもらいます。シャープで直線的なもの、ソフトで若々しいもの、タイトルが目立つもの……何案も試行錯誤し、「どうすればもっとよくなるか」を考え抜きます。
この本の装幀はシルバーをベースに脳の本らしいシャープなものを選択。茂木先生にいただいた「驚きました!」の言葉も帯に入れて、よし、OK!

11月7日 完成・店頭へ

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(左)茂木先生、ありがとうございました!
(右)紀伊國屋書店新宿本店にて。店頭で大きく展開していただいています