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365日、おいしい、楽しい!「魔法のびん詰め」の手作り生活

第5回 『ムルキムチは、わが家の「食べる薬」』

 すっかり秋らしい空になったとはいえ、まだまだ残暑が続く今日このごろですが、みなさまいかがお過ごしですか? 冷たいものを飲み過ぎたり、食欲がないからといって、偏った食事が続き、胃が疲れ気味という人も多いのではないでしょうか? 胃の調子が悪いと、からだに力が入らず、仕事や遊びにも精が出ませんよね。

そんな時におすすめしたいのが、この「ムルキムチ」。
韓国語で「ムル」とは「水」のこと。つまり、まっ赤で辛いキムチではなく、お米のとぎ汁を使ったたっぷりの塩水に野菜を漬け込んで発酵させた水分たっぷりのキムチなのです。 
漬け汁ごとゴクゴクいただくという、日本にはないタイプのお漬物で、漬け汁には、乳酸発酵で生まれたやわらかな酸味と、野菜や生姜のさわやかな香りがあって、食欲のない時や胃腸の調子が悪いときでも、すーっと胃袋に流れていきます。そして胃袋がムクムクと動き出して、重かった胃袋が軽くなるような気がするのです。どうやら、乳酸発酵させた食品を食べると腸内環境が整えられて、胃袋も活性化するようです。
わが家では、残暑が続き体力が落ちている今ごろの季節は、食前にムルキムチの汁をゴクリと飲んで、漬けた野菜は、ごはんと一緒にポリポリといただいて体調のケアをするのが定番となっています。そしてこのムルキムチのいいところがもうひとつ……。なんと二日酔いにも効果があるのです! 呑み助さんには聞き逃せないうれしい情報ですよね。
二日酔いの朝にいただくと、胃がすっきりして、いつもより回復が早いような気がします。ぜひ一度、お試しください!
「ムルキムチ」
※写真は発酵後のようす
<材料>(1リットルびん1本分)
きゅうり 1本
大根 5cm
にんじん 1/3本
りんご(または 梨) 1/4個
万能ネギ 5本
生姜 1かけ
にんにく 1かけ
鷹の爪 1/2本
<A>
米のとぎ汁 800cc
塩 小さじ2(約10g)
<作り方>
1 きゅうりは5mmの厚さの斜め切り、大根とりんごは皮をむいて5mmのいちょう切り、にんじんは縦半分に切ってから3mmの斜め切りにする。万能ネギはざく切り、にんにくは輪切り、生姜はせん切りにする。
2 きゅうりと大根、にんじんをボウルに入れて、野菜の重量の3パーセントの塩(分量外)を振り入れてざっと混ぜる。皿などで軽く重石をして、野菜から水が出てくるまで1~2時間置く。
3 鍋に米のとぎ汁と塩を入れて火にかけ、塩が溶けたら火からおろして冷ましておく。
4 2の野菜から水が出たら、塩気を水で洗い流して、両手でぎゅっと押さえて水気を切る。熱湯消毒した清潔なびんに、水気を切った野菜とりんご、万能ネギ、生姜、にんにく、種を取った鷹の爪を入れて3を注ぎ入れる。軽く蓋をしめ、常温で1晩置く(真夏の常温の室内で12時間ほど)。蓋を開けると、シュワシュワと泡が立ち、漬け汁に酸味が出始めたらふたをして冷蔵庫で保存する。

<ポイント>
◎冷蔵庫で保存していても、少しずつですが発酵が進みます。ガスが抜けるようにびんのフタは軽くしめる程度にしてください(びんが割れないように)。1週間ぐらいで食べきりましょう。
◎必ず清潔な道具を使いましょう。ひと晩発酵させて、酸味のある香りと細かい泡が立っていれば、発酵が成功したサインです。腐敗臭がするようであれば、雑菌が入ってしまった可能性があるので、残念ですが廃棄しましょう。
◎今回は、大根ときゅうりをメインにして作りましたが、白菜や青菜で作ってもおいしいです。
◎ 米のとぎ汁は、いちばん最初のとぎ汁は捨て、2回目以降の少し澄んだものを使います。とぎ汁を使わずに、ひと煮立ちさせた塩水を冷まして使うと、スッキリした仕上がりになります。

<アレンジレシピ>
鶏の茹で汁とムルキムチの漬け汁を合わせたスープでいただく、韓国冷麺風のそうめんです。ムルキムチの野菜とほぐした茹で鶏を梅肉で和えてトッピングにしました。食べすすむにつれ、梅肉がスープに溶け込み、味の変化が楽しめます。
「ムルキムチと茹で鶏の
韓国風そうめん」


<材料>(4人分)
鶏胸肉 1枚
水 800cc
梅干し 2~3粒
青じそ 10枚
白いりごま 少々
そうめん または 稲庭うどん
ムルキムチ 適量
塩 少々
薄口醤油 少々
<A>
塩 小さじ1
日本酒 大さじ1
<作り方>
1 鶏胸肉は、<A>をもみ込んで1時間ほど置く。分量の水とともに鍋に入れて強火にかける。沸騰してきたら弱火で3分ほど茹でて火を消し、蓋をして冷めるまで置く。冷蔵庫に入れてしっかり冷やしておく。
2 梅干しは種を取り除いて包丁で叩いて梅肉にする。青じそはせん切りにしてさっと水にさらす。そうめんは好みの固さに茹で上げ、冷水でしっかり洗ってぬめりを取り、水気を切る。
3 冷やしておいた鶏の茹で汁とムルキムチの漬け汁各600ccを合わせて塩と薄口醤油で味を調える。鶏肉は皮を剥いで身をほぐし、梅肉で和える。
4 うつわにそうめんを入れて3のスープを入れ、ムルキムチの野菜、鶏肉、青じそのせん切りをのせる。ごまを散らす。

<ポイント>
◎梅干しは、甘いものより酸味と塩気の強いものがおすすめです。
◎スープに味を付ける時は、梅肉の塩分を考慮して、少し控えめにつけましょう。

著者プロフィール

こてらみや(こてらみや)

フードコーディネーター、料理家。
京都・祇園生まれということもあり、子どもの頃より京料理やおばんざいに接して育つ。また、実家が西洋骨董店を営んでいるため、自然と食器やグラスにも興味を持つ。
上京後、フードコーディネーターのアシスタントを経て独立。以来、料理制作、スタイリング等、食の総合的なコーディネーターとして活躍。
とくにスパイスや香味野菜など、「香り」をいかした料理に定評がある。
ライフワークは「季節の仕込みもの作り」で、味噌や漬物等の醗酵食品、旬の食材を使ったジャム、シロップ、佃煮などヒマを見つけてはびん詰めにして楽しんでいる。
好きな言葉は、帝国ホテルの総料理長だった故村上信夫氏の「世界一おいしい料理は、円満な夫婦の家庭料理」。

こてらみやのブログ〈オサルノビタミン〉
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